【2021年10月】「事故物件」判断基準を公表

国交省が“事故物件”の告知に初の判断基準 不動産のおはなし

国土交通省が2021年10月に「人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。このガイドラインは宅建業者へ向けたものとなりますが、消費者にとってもとても重要な基準となります。

「告知しなくても良いケース」と「調査義務の範囲」が明確化されました

「告知しなくても良いケース」に当てはまれば、原則「告知」の義務が無くなるため、売却時に減額の対象とならずに済みます。しかし「人の死の告知に関するガイドライン」をまだまだ知らないお客様や営業マンが多いのも事実です。公正公平な安全なお取引をするため概要をまとめてみました。

ルールの未整備

「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」は、国交省の「不動産取引に係る心理的瑕疵に関する検討会」が取りまとめた内容になります。宅建業者には、取引相手の判断に重要な影響を及ぼす事項を告知する義務があります。

しかし、死亡事案が発生した不動産の取り扱いには、明確なルールがなく、死亡の事実が入居者の判断に重要な影響を及ぼすかどうかという判断基準がなかったために、宅建業者は裁判例などを参考に個別対応するしかありませんでした。

単身高齢者の住宅難の原因に

検討会の資料によると、約8割もの賃貸オーナーが高齢者の入居に拒否感を示しています(図表1)単身高齢者が所有物件で死亡すると、老衰や病死でも事故物件扱いされるのではないか、告知すれば賃料の減額請求の理由にされてしまうのではないか、といった不安がオーナーの拒否感につながり、単身高齢者がなかなか住まいを確保できない事態を引き起こしています。

検討会がガイドラインの策定を目指した背景には、こういった背景があり、今年5月に示されたガイドライン案に寄せられた意見(パブリックコメント)は218件。200件超のパブリックコメントは大きな反響であり、国民の関心の高さがうかがえます。

図表1 高齢者の入居に対する賃貸人の意識

告知しなくても良いケースを明確化

このガイドラインでは、一戸建てやマンション、アパートなど「居住用不動産」を対象にしています。主なケースと契約形態別の告知の必要性をまとめた(図表2)をご覧ください。

宅建業法上は、「宅建業者は、人の死に関する事案が、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、これを告げなければならない」というのが原則となります。これをベースとして、ガイドラインでは「告げなくても良い場合」が明示されました(図表2の×部分)

取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は、告知が必要となります(図表2の○部分)老衰や病死(図表2の①)が告知不要と明らかにされたことは、単身高齢者が入居を拒まれない環境を目指すうえでは大きな一歩といえるでしょう。便宜上③が設けられていますが、ガイドラインでは、他殺や自殺の告知を明記していません。ガイドラインはあくまで「告げなくてもよい場合」を示しており、「告げなくてもよい場合」のほかは原則どおりという構成になっているようです。

5月のガイドライン案では他殺・自殺を「告知すべき内容」とはっきり記していたましたが、パブリックコメントで「自殺に対する偏見を助長する内容」との指摘があったことを受け、表現の仕方が修正されました。

買主・借主に告知する場合は、事案の発生時期・場所・死因(自然死/他殺/自死/事故死等の別。不明の場合はその旨)特殊清掃等が行われた場合はその旨を告げます。死亡した本人やその遺族などの名誉や生活の平穏に十分配慮する必要があり、死者の氏名・年齢・住所・家族構成や具体的な死の態様・発見状況等は告げる必要はありません。また、買主・貸主に告知する場合は、後日のトラブル防止のため「書面の交付等によることが望ましい」とされています。

図表2 主なケース・契約形態別の宅地建物取引業者の死亡事案告知の取り扱い
○=取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合、告げなければならない[原則]
×=告げなくてもよい

※事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は告げる必要あり
※人の死の発覚から経過した期間や死因にかかわらず、買主・借主から死亡事案の有無を質問された場合、買主・借主に把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等は告げる必要がある

ガイドラインでは整理されなかったケース

※これらは一般的に妥当と整理できるだけの裁判例や取引実務の蓄積がなかったため、ガイドラインの対象に含まれず、引き続き個別判断。ガイドラインは実例の蓄積を踏まえて、適時見直しが図られる予定で⑥~⑧は今後の事例蓄積の先の判断となります。

宅建業者の調査義務の範囲も明らかに

媒介をおこなう宅建業者の調査の範囲も明らかになりました。宅建業者は、売主・貸主に対し、物件状況等報告書やその他の書面(告知書等)に過去に生じた事案について記載を求めることで「媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする」とされました。そのため、宅建業者が自ら周辺住民に聞き込みをしたり、インターネットサイトを調査したりする義務はありません。

したがって、トラブル防止の観点から告知書等の重要性が高まります。宅建業者は「売主・貸主に記載が適切にされるよう助言することが望ましい」としています。同時に、故意に告知しなかった場合などは、民事上の責任を問われる可能性があることを宅建業者から売主・貸主に伝えることも重要となります。

告知書等に売主・貸主からの告知がない場合にも、人の死に関する事案の存在を疑う事情があるときは、宅建業者は売主・貸主に確認する必要があります。たとえば、管理会社から死亡事案があったことを宅建業者が聞いていた場合に、告知書等に記載がなかったときは、売主・貸主にその事実を伝えないと宅建業法違反となります。

ガイドラインは、人の死が起きた居住用不動産に対して、宅建業法上宅建業者が取るべき対応と、同法の義務の解釈を整理しています。位置づけとしては「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」と同じものになります。守らなかったからといって、ただちに宅建業法違反となるわけではありませんが、トラブルになった場合はガイドラインが参考にされます。

国交省「しっかり読み、トラブル未然防止を」

国交省は「ガイドライン本文にはさまざまな留意点等を記載している。事業者の皆さまには、具体の事案や買主・借主の移行等を踏まえて対応いただくこととなるが、ガイドラインをしっかり読んでご理解いただき、トラブルの未然防止につなげて頂きたい」と呼びかけています。


以上、このような不動産を今まさに処分を検討されている方や、処分できずにいる方で、ご不安やご心配のある方はお気軽にお問い合わせください。少しでも条件が改善されるよう多岐にわたりご提案をさせて頂いております。どうぞ宜しくお願い致します。

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